アガルート予備試験講座を検証|元四大弁護士が「添削206通」と全額返金の条件を読む

本記事には広告を含みます。

結論:アガルートは「添削を商品にした予備校」

先に結論を書きます。

アガルートの予備試験最短合格カリキュラムは、添削の通数と、添削する人間の質を正面から価格に乗せた商品です。講義の分かりやすさやテキストの見やすさは各社それなりに競争しており、そこで決定的な差はつきません。アガルートが他社と違うのは、フルカリキュラムで206通、ライトで174通という添削通数を明示し、それをプロ講師が担当すると言い切っている点です。

当サイトの予備校比較記事で書いたとおり、予備校の価格差の実体は「答案を見慣れた人に、何回見てもらえるか」に集約されます。その意味で、アガルートは価格と提供物の対応関係がもっとも分かりやすい予備校です。

一方で、広告で強調される「合格したら全額返金」は、規約を読むと通常イメージされる返金とはかなり違う制度です。実名と顔を出して合格体験記とインタビューに応じることが条件であり、法的性質も売買契約の解除ではありません。ここは後半で詳しく分解します。

料金:2027・2028年合格目標カリキュラムの価格

2026年8月時点で、公式サイトに掲載されている価格は以下のとおりです。

プラン 税抜 税込 オンライン添削 質問制度
フルカリキュラム 1,180,000円 1,298,000円 206通 100回
ライトカリキュラム 908,000円 998,800円 174通 50回

差額は税込299,200円です。この30万円弱で何を買うことになるのかは、後述する表で分解します。

なお、2028・2029年合格目標のカリキュラムも別途販売されており、価格・内容は年度ごとに改定されます。またセールや各種割引(他校乗換割20%OFF、受験経験者割5%OFF、大学生協・代理店割5%OFFなど)の適用で実際の支払額は変わるため、申込み前に必ず公式サイトの最新価格を確認してください。

5%OFFクーポンが出ています(2026年12月21日まで)

事実として書いておきます。アガルートは会員数30万人突破を記念して、2026年8月25日から12月21日23時59分まで、5%OFFのクーポンを配布しています。対象はアガルートアカデミーのすべての講座です。

ただし、講座名に以下を含むものは対象外とされています。

個別指導、定期カウンセリング、追加、添削オプション、英語添削、英語模擬面接、口頭模試、オリジナル三角定規、当日ライブ、マンツーマン、上下水道部門講座、コーチング

ここは読み方に注意が要ります。「個別指導」「定期カウンセリング」「添削オプション」「コーチング」が対象外ということは、本記事で「初学者にとって効く」と書いた種類のサポートを後から積み増す場合、その分には割引が効かないということです。カリキュラム本体は割引され、人が付くオプションは割引されない。この構造は理解しておいてください。

金額の感覚としては、フルカリキュラム1,298,000円に対して5%はおよそ6万5,000円です。小さくない差なので、申し込むと決めている人が知らずに定価で買うのは単純な損です。

一方で、割引があることを購入の理由にすべきではありません。5%引かれても123万円は123万円です。前述のとおり、返金特典を織り込まずに満額を払える金額かどうかで判断してください。

なお他の割引(他校乗換割20%OFF、受験経験者割5%OFFなど)との併用可否や、適用の手順は公式サイトで確認が必要です。

添削206通の中身を分解する

「業界最多206通」という表現だけでは、実務的な価値は判断できません。公式サイトに内訳が公開されているので、そのまま並べます。

講座 通数
論文答案の「書き方」 35通
重要問題習得講座 42通
法律実務基礎科目 重要問題習得講座 4通
予備試験 論文過去問解析講座 90通
選択科目 予備試験論文過去問解析講座 3通
予備試験・法科大学院入試答練 28通
法律実務基礎科目答練 4通
合計 206通

注目すべきは、206通のうち90通が予備試験の論文過去問(10年分)だという点です。ここは以前のカリキュラムでは「過去問セレクト答練18通」だった部分で、大幅に増えています。

過去問の添削がなぜ他より価値が高いか。出題趣旨が公表されており、採点する側が何を見ていたかを事後的に検証できるからです。予備校のオリジナル問題は、その予備校の採点基準の中でしか正解が定まりません。過去問なら、添削者のコメントが的外れだったかどうかを自分で判定できます。添削を受けるときは、添削者を信じきらずに検算できる素材を選ぶべきで、その意味で90通という配分は合理的です。

私自身、受験時代に受けた添削は、ほぼすべてが過去問に対するものでした。予備校のオリジナル問題を大量に書くより、過去問を書いて見てもらうほうが結果的に伸びたという実感があります。

これは予備試験に限った話ではありません。どの試験でも、実際に出題された問題以上の教材は存在しない。過去問は、出題者がその年に何を問いたかったかという情報そのものだからです。添削に使える枠が有限なら、優先して過去問に投じるべきだと考えています。

手書き答案は添削されない

見落とされがちですが、公式サイトに明記されている重要な制約があります。答案の提出はWordファイルまたはPDF形式で、手書きで作成した答案は添削されません。

従来これは明確なデメリットでした。本番が手書きである以上、手書きの分量感・時間感覚が身につかないからです。ただし2026年(令和8年)の試験からCBT方式(パソコン受験)が導入されたことで、この位置づけは変わりました。アガルートはCBT演習環境も提供しており、現在ではむしろ本番形式と整合的です。

とはいえ、答案構成をどこまで手で書くか、画面上でどう見直すかといった作法は、受験生自身が固める必要があります。ここは予備校が代わりにやってくれる部分ではありません。

フルとライトの差は「答練」と「担任」

30万円弱の差額で何が変わるのかを整理します。

項目 フル ライト
オンライン添削 206通 174通
予備試験・法科大学院入試答練 ○ ×
法律実務基礎科目答練 ○ ×
短答絶対合格!スキル習得講座 ○ ×
一般教養科目対策講座 ○ ×
旧司法試験 論文過去問解析講座 ○ ×
パーソナルコーチング(月1回・担任制) ○ ×
口頭論文添削 ○ ×
質問制度 100回 50回
合格特典(全額返金)の対象 ○ ×

差額で買っているのは、おおまかに**「答練32通」「担任講師による月1回のコーチング」「合格特典を受け取る権利」**の3つです。

このうち、初学者にとって効くのは担任制のコーチングだと考えます。予備試験の学習で最も高くつく失敗は、間違った方向に半年走ることです。教材の質の差より、方向修正の頻度の差のほうが結果に効きます。逆に、すでに学習経験があり、自分の弱点と進度を自己管理できる人にとっては、ライトで足りる可能性が高いです。

「合格したら全額返金」の条件を読む

ここが本記事の中心です。広告では「合格すれば実質無料」と紹介されがちですが、公式サイトの合格特典ページに書かれている条件を読むと、性質がかなり違います。2027・2028年合格目標カリキュラムについて、公表されている主な条件は次のとおりです。

  • 対象はフルカリキュラムのみ。ライトは対象外
  • 提出書類:短答・論文・口述の各成績通知書データ、論文式試験の再現答案、口述試験の再現レポート、顔写真、合格体験記
  • 合格者インタビューへの出演(Zoomでのリモート撮影)
  • 氏名も公表される。理由を問わず旧姓等、実名以外での掲載は受け付けない
  • 返金額は購入した対象講座の税抜価格。セール価格で購入した場合はセール価格の税抜額
  • 対象となる合格年度が限定されている(2027・2028年合格目標なら2027年・2028年の合格が対象)
  • 合格体験記は所定の文字数要件を満たし、受講と合格の因果関係が客観的に認められる内容であることが条件
  • 特典を受けた後に掲載の取り止めを希望する場合、理由を問わず返金額全額を返還したうえで事務手数料30,000円(税別)を支払う

そして、法的な性質について公式サイトはこう明記しています。「全額返金」「お祝い金」という文言にかかわらず、この特典は合格体験記の提出やインタビュー出演に対して原稿料または講演料を支払うものであり、購入済み商品の売買契約を解除するものではない、と。したがって支払いは源泉所得税を控除した残額の振込になり、5万円以上の場合はマイナンバーカードの写しの提出も求められます。

弁護士としてこの条件をどう評価するか

まず、この設計自体は不当なものではありません。むしろ、性質を明示している点でかなり誠実な部類です。実務では「返金」と称しながら法的性質を曖昧にしたまま運用される制度も見かけます。アガルートは源泉徴収の扱いまで先に書いており、後から揉める余地を潰しています。

そのうえで、受験生が意思決定に使うときの注意点は3つあります。

1. 手取りは表示額と一致しません。 原稿料・講演料である以上、源泉徴収後の入金です。受講料と同額が戻ると考えて資金計画を立てると、その分だけずれます。

2. 実名・顔出しが条件です。 合格体験記とインタビューは、公式サイトだけでなく広告媒体にも使用されます。法曹は実名で検索される職業なので、その記事は合格後も残り続けます。

ここは不利益として語られがちですが、私はそう見ていません。採用側に関わった経験から言うと、合格体験記が出てくること自体はプラスに働きます。評価しているのは内容ではなく、書けたという事実のほうです。自分がどう勉強し、何でつまずき、どう修正したかを、他人が読める形で言語化できる。これは就職活動でも、実務に入ってからも通用するスキルです。合格体験記を書くことは、その訓練の機会でもあります。

ただしこれは、公開して差し支えない人にとっての話です。勤務先との関係で受験の事実を伏せておきたい社会人など、匿名で通したい事情がある人にとっては、この特典の価値は実質ゼロになります。その場合はライトを選び、差額を別の用途に回すほうが合理的な可能性があります。

3. 返金を織り込んで予算を組むのは危険です。 予備試験の最終合格率は例年数%台です(令和7年は3.6%)。合格を前提に支払額を割り引いて考えると、判断が歪みます。返金は「受かったらラッキー」の位置に置き、支払える金額かどうかは満額で判断してください。

合格実績の数字をどう読むか

アガルートが前面に出しているのは、令和7年司法試験の合格者1,581名のうち有料受講生が618名、占有率39.1%という数字です。

これは事実として公表されている数字ですが、読むときに3つ確認が要ります。

司法試験の数字であって、予備試験の数字ではありません。 予備試験対策の講座を選ぶ材料としては、間接的な指標です。

占有率は合格率ではありません。 母数は「アガルートの受講生数」ではなく「司法試験の合格者数」です。受講生が何人いて何人受かったかは分かりません。分母が公表されていない以上、「アガルートを選べば39.1%の確率で受かる」という読み方はできません。

「有料受講生」の範囲が広い可能性があります。 単科講座の購入者も含まれうる集計なので、フルカリキュラム受講生の成績を示すものとは限りません。

これはアガルートに限った話ではなく、業界全体の慣行です。比較記事で書いたとおり、各社の公表する占有率を合計すると100%を超えます。合格者は複数の予備校の講座を併用しているからです。数字を並べて優劣を決めようとすると、必ず判断を誤ります。

向いている人・向いていない人

向いている人

  • 論文の書き方が身についていない初学者。206通のうち35通が「書き方」講座に配分されており、最初の壁に人手が割かれている設計です
  • 答案を提出する習慣を、外圧なしには作れない人。担任のコーチングが月1回入るのは、この点で効きます
  • オンライン完結で問題ない人。校舎はバーチャル校舎で、通学の物理的な拘束はありません
  • 実名・顔出しに抵抗がなく、合格特典を現実的な選択肢として計算に入れられる人

向いていない人

  • 匿名性を重視する人。合格特典の条件と噛み合いません
  • すでに答案を書ける中上級者。基礎講義の比重が高いフルカリキュラムは過剰投資になりがちです。単科や中上級者向けカリキュラムを検討すべきです
  • 対面での質疑応答を重視する人。バーチャル校舎はありますが、通学制の予備校とは体験が異なります
  • 100万円超を一括で用意できない人。分割払いは用意されていますが、教育クレジットローンを利用した場合は解約できない旨が明記されています。この点は申込み前に必ず確認してください

判断を保留したい場合に取れる手段

いきなり100万円を払う必要はありません。現実的な順序は以下です。

  1. 無料の資料請求・体験を使う。サンプル講義とテキストが送られてくるので、工藤講師の講義のテンポと、フルカラーテキストのレイアウトが自分に合うかを先に確認できます。講義の相性は文章では判断できません
  2. 受講相談を使う。既習者かどうかで推奨カリキュラムが変わるため、自分の現在地を伝えて確認する価値があります
  3. 割引の適用可否を先に確認する。他校乗換割20%OFF、受験経験者割5%OFFなどは、申込み前の申請が必要です
  4. 講座ページで最新価格とセールの適用状況を確認する。価格は年度やキャンペーンで動くため、資料が届くのを待っている間に条件が変わることがあります。2026年12月21日までは前述の5%OFFクーポンが出ています

資料請求は判断材料を増やすための手段であって、それ自体が目的ではありません。サンプルを見て相性が悪いと感じたなら、そこで止めるのが正しい判断です。逆に手応えがあったなら、講座ページで現在の価格と割引条件を確認してから決めてください。

まとめ

アガルートは、添削の量を正面から商品化し、その条件を細かく開示している予備校です。206通の内訳も、合格特典の法的性質も、公式サイトを読めば分かるように書かれています。この開示の細かさ自体が、選ぶ側にとっての判断材料になります。

判断の順序としては、こう考えるのが実務的です。まずフルかライトかを、自分に自己管理能力があるかで決める。次に合格特典を計算に入れるかどうかを、実名公表を受け入れられるかで決める。占有率の数字は、この2つの判断のどちらにも使えません。

そして繰り返しますが、1社ですべてを埋める必要はありません。軸を1社に決めて、足りない機能を後から足すのが現実的です。この考え方は以下の記事で詳しく書いています。

※本記事の料金・カリキュラム内容・合格特典の条件は、2026年8月時点で公式サイトに掲載されている情報に基づきます。これらは予告なく変更される場合があるため、申込みの際は必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。また本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。