予備試験CBT完全解説|元四大弁護士が法務省Q&Aから「零点になる経路」を洗い出す

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結論:CBTで変わったのは「答案の壊れ方」

2026年(令和8年)の予備試験から、論文式試験にCBT方式(パソコン入力)が導入されました。**論文式試験の実施日は9月12日(土)と13日(日)**です。史上初のCBT論文が、目前に迫っています。

CBTについての解説はすでに各所にありますが、その多くは「タイピングに慣れましょう」で終わっています。本記事はそこを扱いません。

法務省が公表しているQ&Aを読み込むと、もっと重要なことが書かれています。実力と無関係に答案が零点になる経路が、明確に存在するという事実です。

弁護士の実務でも、書面の中身が正しいことと、形式で無効にならないことは別の作業です。CBTはこの「形式で壊れるリスク」の種類を、手書き時代から入れ替えました。本記事は、そこを洗い出します。

なお、本記事の記述はすべて法務省が公表している令和8年司法試験予備試験に関するQ&Aに基づいています。同Q&Aは随時更新されているため、受験予定の方は必ず原典を直接確認してください。

前提:CBTになるのは論文式だけ

まず範囲を正確に押さえます。

試験 2026年の方式
短答式 従来どおりマークシート(鉛筆・消しゴム使用)
論文式 CBT方式(会場設置のパソコンに入力)
口述試験 従来どおり

予備試験でCBTになるのは論文式試験のみです。司法試験は短答式・論文式の両方がCBTになるため、そちらと混同した情報が出回っています。予備試験受験生が対策すべきは論文式だけです。

主な日程は以下のとおりです。

項目 日付
論文式試験 2026年9月12日(土)・13日(日)
論文式試験の受験票 2026年8月下旬から通知開始
論文式試験の合格発表 2026年12月17日(木)
口述試験 2027年1月23日(土)・24日(日)

電子出願をした人の受験票は郵送されません。**マイナポータルから自分でダウンロードし、紙に印刷して持参する必要があります。**画面表示だけでは受験できないと明記されています。ここは早めに処理しておくべき事項です。

零点になる3つの経路

ここが本記事の中心です。法務省Q&Aには、答案が零点または無効となる場合が具体的に書かれています。いずれも法律の実力とは無関係です。

経路1:答案の入力箇所を取り違える

最も危険なのがこれです。

Q&Aには、たとえば法律実務基礎科目(民事)の入力欄に刑事の答案を入力してしまった場合、零点として取り扱われると明記されています。そして試験時間終了後は、取り違えの申請に一切応じないとされています。

救済手段はあります。試験時間中に気づけば、コピー・貼付け機能で自分で正しい欄に移せます。ただし後述する文字数制限のせいで直接の転記ができない場合があり、その際はメモ画面を経由して入れ替える必要があります。

つまり、気づくのが1秒でも試験終了後なら、その答案は消えます。

手書き時代にも答案用紙の取り違えはあり得ましたが、紙は物理的に目の前にあり、科目名が印刷された用紙を手に取る動作が挟まっていました。画面上でタブを切り替える操作には、その物理的な確認が入りません。リスクの性質が変わっています。

対策は単純です。**試験開始直後、書き始める前に、入力欄の科目表示を必ず目で確認する。**そして途中でも一度確認する。この2秒を習慣にしてください。

経路2:1行おきに空けて書く

Q&Aには、答案の解答欄を1行おきに空けて記載した場合、特定人の答案であると判断される答案として無効答案とされる(零点となる)場合があると書かれています。

これは見落とされやすい規定です。手書きの答案で読みやすさのために行間を空けていた人、あるいは段落の区切りで1行空ける習慣がある人は、その癖がそのまま零点に直結します。

答案の匿名性を保つための規定なので、意図の有無は関係ありません。演習の段階から、1行空けをしない書き方に統一しておいてください。

経路3:受付を忘れる

これは答案の話ですらありません。

論文式試験では、試験会場で毎日受付を行う必要があります。受験票と本人確認書類を毎日持参し、各試験期日の受付終了時刻までに受付を申し出る。Q&Aには、受付終了時刻までに申し出なかった場合、それ以降の受験は一切できなくなると明記されています。

さらに、試験開始時刻に試験室に入室していない場合も、それ以降の受験は一切できません。

論文式試験は2日間にわたります。**初日に受付を済ませたから2日目は不要、ということはありません。**毎日必要です。

分量の上限が、全員同じになった

CBTで最も本質的な変化は、実はここだと考えています。

Q&Aによれば、1頁は23行、1行あたり最大30文字。そして法律基本科目・選択科目は各科目につき4頁、法律実務基礎科目は民事・刑事それぞれ4頁です。

計算すると、1科目あたりの上限は23行 × 30文字 × 4頁 = 2,760文字になります。

手書きの時代、答案用紙の行数は決まっていましたが、1行に何文字書くかは受験生の自由でした。字が小さく速い人は、同じ紙面に他人の1.5倍の情報を詰め込めた。これは実質的なアドバンテージでした。

**CBTでは、この差が消えます。**全員が同じ上限のもとで戦うことになります。

これが何を意味するか。書ける量で差をつけられなくなった以上、限られた分量で何を書くかの選択が、直接点数に効いてきます。

当サイトでは繰り返し「配点の重心は当てはめにある」と書いてきました。論証を丁寧に展開して満足し、当てはめが数行で終わる答案は点になりません。**2,760文字という天井は、この問題をより厳しく突きつけます。**論証に800文字使えば、当てはめに使える分は確実に減ります。

分量の配分は、これまで以上に構成段階で決めておくべき事項になりました。

使える機能・使えない機能

Q&Aから、CBTシステムの仕様を整理します。

項目 可否
コピー(Ctrl+C)・貼付け(Ctrl+V)・切取り(Ctrl+X) 使える
元に戻す(Ctrl+Z)・やり直す(Ctrl+Y) 使える
全選択(Ctrl+A)・文頭へ(Ctrl+Home)・文末へ(Ctrl+End) 使える
予測変換 使えない
日本語入力の学習機能 使える
手書き入力 使えない
インデント設定・禁則処理 使えない
半角文字の入力 不可(自動的に全角に変換される)
記号の入力 一部(⑴、ⅰ等)を除き不可
Word等の他アプリの起動 不可
答案の手動保存 機能なし(入力の都度、自動バックアップ)
試験時間終了前の提出・退出 不可

予測変換が使えない点は、実際に効きます。「瑕疵」「蓋然性」「抗弁」「錯誤」といった法律用語を、毎回変換して確定させる操作が入ります。学習機能自体は生きているので試験中に同じ語を繰り返せば楽にはなりますが、序盤は確実に時間を取られます。

一方で、自動バックアップは安心材料です。手動保存の機能はありませんが、入力のたびに保存されており、パソコンに不具合が生じても直前の状態から再開できる仕様とされています。ネットワーク障害が起きても試験を継続できるとも明記されています。誤って消した場合もCtrl+Zで戻せます。

なお、意図的にパソコンに負荷をかけた場合は時間延長などの措置を採らず、不正行為として扱うことがあるとも書かれています。

持ち込みと当日の環境

ここも手書き時代と大きく変わっています。

**筆記具は持ち込めません。**会場に用意されたメモ用紙とシャープペンシルのみを使います。使い慣れたペンで答案構成をする、ということができません。

**時計とストップウォッチも持ち込めません。**現在時刻と残り時間は画面上に表示されます。腕時計で時間を管理する習慣がある人は、画面上の残り時間表示を見る癖に切り替えておく必要があります。

答案構成に使える紙は、A3用紙2つ折りが1枚だけです。試験時間ごとに配付されますが、追加はありません。持ち帰りは可能です。

紙面が限られている以上、答案構成の書き方そのものを、この制約に合わせて設計しておくべきです。普段A4を何枚も使って構成している人は、今のうちに1枚に収める練習をしてください。

法文については、2026年試験では紙媒体でも配付され、画面上でも閲覧できます。ただし紙の法文は貸与物なので、線を引いたり折り目をつけたりすることは禁止されており、書き込みは不正行為とみなされる場合があります。全科目受験後に、自分が使った法文のみ持ち帰れます。

なお、論文式試験の問題文は紙で配付されません。画面上での閲覧のみです。問題文と答案入力欄を画面上で行き来する操作に、慣れておく必要があります。

飲用水の条件も細かく定められています。1,000ml以下の透明なペットボトル1本のみ、ラベルは事前に外す、飲むとき以外はキャップを締めて足元に置く、凍っていないこと。さらに品名が「飲用水」「ミネラルウォーター」等であることが求められ、清涼飲料水は不可とされています。当日にコンビニで適当に買うと、条件を満たさない可能性があります。

今からできること

論文式試験まで3週間という時点で、現実的に効果があることを挙げます。

1. 法務省の体験版システムを触る

法務省がCBTシステムの体験版を公開しています。実際の試験で使うアプリケーションと基本的な画面構成・操作方法は同様のものとする予定、とされています。令和2年から令和7年の予備試験論文式の問題も収録されています。

本番で初めて画面に触れるのは、避けられる失敗です。

2. 入力欄の確認を動作として固める

前述のとおり、取り違えは零点です。「開始直後に科目表示を見る」を、演習のたびに機械的に繰り返してください。知識ではなく動作として体に入れるべき事項です。

3. 1行空けの癖を消す

演習の段階から徹底してください。本番だけ気をつける、では間に合いません。

4. 2,760文字の感覚を掴む

1科目の上限を実際に体感しておくと、構成段階での配分判断が変わります。手書きの分量感覚のままだと、書けると思っていた量が入りません。

5. 受験票を印刷する

電子出願の場合、マイナポータルからのダウンロードと印刷が必要です。8月下旬から通知開始なので、届き次第すぐに処理してください。

2027年以降を見据える人へ

来年以降に受験する人にとって、CBTの導入は予備校選びの判断材料が1つ増えたことを意味します。

答案をパソコンで作成する演習環境が用意されているか。これは従来なかった比較軸です。実際、各社の対応には差があります。手書き答案の添削を受け付けていない講座は従来デメリットとされていましたが、CBT移行によってその評価は反転しました。

各社の対応状況は予備校7社の比較記事で整理しています。

また、CBTによって答案が電子データになったことは、添削のあり方そのものにも影響します。データで提出される答案は、そのまま自動処理の対象になり得るからです。この論点はスタディングの検証記事で詳しく扱いました。

まとめ

  • 予備試験でCBTになるのは論文式のみ。短答式はマークシートのまま
  • 2026年の論文式試験は9月12日・13日
  • 答案の入力欄を取り違えると零点。試験終了後の申請は一切受け付けられない
  • 1行おきに空けて書くと無効答案とされる場合がある
  • 論文式は毎日の受付が必須。受付終了時刻を過ぎるとその後受験できない
  • 1科目の上限は23行×30文字×4頁=2,760文字。書ける量の差が消えた
  • 予測変換は使えないが、自動バックアップは常時働いている
  • 筆記具・時計は持ち込み不可。答案構成用紙はA3二つ折り1枚のみ

CBTで問われる法律の実力は、手書きの時代と変わりません。**変わったのは、実力を答案として提出しきるまでの経路にある落とし穴の位置です。**そこだけは、知識とは別に潰しておく必要があります。

※本記事は2026年8月21日時点で法務省が公表している情報に基づく一般的な情報提供です。制度・運用は変更される場合があるため、受験に際しては必ず法務省の公式Q&Aおよび受験案内で最新の内容をご確認ください。

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