スタディング予備試験講座を検証|「安いから添削がない」はもう古い

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結論:スタディングの評価軸は2026年に変わった

これまでスタディングは、こう説明されるのが定番でした。「講義は良いが、講師による答案添削がない。だから安い。だから論文対策は他で補う必要がある」。

この説明は、2026年時点ではもう正確ではありません。

スタディングは論文対策講座に生成AIによる即時添削を導入し、AI添削チケット300枚付きの演習講座を39,800円(税込)で提供しています。答案をその場でタイピング入力して提出すると、即座にフィードバックが返る仕組みです。

つまり、**「添削がない予備校」ではなく「添削の担い手を人間からAIに置き換えた予備校」**になった。評価すべき論点は「添削の有無」から「AIの添削で何が埋まり、何が埋まらないか」に移りました。本記事はそこを分解します。

なお当サイトでは予備試験の予備校7社を比較し、価格差の実体は「答案を見慣れた人に何回見てもらえるか」だと書きました。スタディングは、その前提そのものに変更を迫る存在です。

料金:数字だけを見ると判断を誤る

2026年8月20日時点で公式サイトに掲載されている主なコースは以下のとおりです。

コース 価格(税込) 内容
予備試験合格コース(基礎)[2027+2028年試験対応] 89,100円 基礎知識インプット+短答対策
予備試験合格コース(総合)[2027+2028年試験対応] 148,000円(キャンペーン価格137,000円) 上記+実務基礎+論文対策
2027年予備試験論文対策コース 129,800円(キャンペーン価格118,800円) 実務基礎+論文コアメソッド+予備試験実践
論文対策講座 予備試験実践編[2026年試験対応] 39,800円 論文過去問演習+AI添削チケット300枚
書ける!判例論証講座[2027年試験対応] 77,000円(基本講座受講者割引59,400円) 判例の論証に特化

ここで最も注意すべきは、最安値として引用されがちな89,100円のコースには論文対策が含まれないという点です。予備試験の合否を分けるのは論文式試験ですから、このコースだけで予備試験に臨む設計にはなっていません。「9万円で予備試験対策ができる」という理解で申し込むと、後から追加が必要になります。

論文対策まで含めるなら「総合」コース(キャンペーン価格137,000円)が基準になります。それでも、アガルートのフルカリキュラム(税込1,298,000円)の約10分の1です。桁が違うのは事実で、その差がどこから来るのかを次に見ます。

このほか、無料会員登録で短答式の過去問演習(公式表記で2,872問、利用期限あり)が使えます。学生向けの割引や合格お祝い金制度、再受講者向けの更新版価格も用意されています。キャンペーン価格は期限付きなので、申込み前に必ず公式サイトで最新価格を確認してください。

AI添削は何をしているのか

公式サイトによれば、この講座では答案をPC上で作成して提出すると生成AIが分析を開始し、答案の背後にある思考のプロセスまで診断して具体的な改善案を提示するとされています。従来の答練添削にあった「返却までのタイムラグ」と「指導レベルのバラツキ」という課題を解決する、という位置づけです。

この説明は、課題の設定としては正しいと考えます。予備校の答練添削の最大の弱点は、返却までに時間がかかることです。書いた直後は自分がどこで迷い、どこを飛ばし、どこで時間が足りなくなったかを鮮明に覚えています。その記憶が消えた2〜3週間後にコメントだけ返ってきても、吸収できる量は目減りします。即時性は、添削の質そのものを構成する要素です。ここをAIで解決するという発想には合理性があります。

私自身の記憶では、答練の答案が返ってくるまでおよそ2週間かかっていました。そして返ってきた頃には、自分が何を書いたのかを正確には覚えていないことも多かった。なぜここでこの構成を選んだのか、なぜこの論点を落としたのかを思い出せないまま赤字だけを読んでも、直せるのは表面だけです。添削の価値のかなりの部分が、返却を待つ2週間で目減りしていたと思います。

添削の機能を2つに分けて考える

そのうえで、添削という作業を実務的に分解すると、性質の違う2つの仕事が混ざっています。

1つめは、形式と論理の検査です。 法的三段論法が壊れていないか。規範を立てたのに当てはめが対応していないか。問題文の事実を拾い残していないか。論点を落としていないか。日本語として読めるか。

これらは判断基準を言語化でき、大量の答案パターンから学習できる領域です。しかも即時に返ることの価値が大きい。現在のAIが得意とする方向と、素直に重なります。

2つめは、評価の較正です。 この答案は本番で何位相当なのか。この程度の当てはめで合格ラインに届くのか。ここは切り捨ててよい論点か、それとも致命傷か。

これは採点者の相場観に属する仕事で、実際に大量の合格答案と不合格答案を見た経験に依存します。現時点では、ここに人間の優位が残っていると考えるのが妥当でしょう。

実務で若手の起案を見るときも、この2つは全く別の作業です。形式面ができていることは最低条件で、そこは満たされている前提で読み始めます。そのうえで見るのは、論証が正確かどうかと、当てはめの密度が足りているかどうか。実質的にはこの2点です。

形式の誤りは、指摘すれば直ります。しかし「この論証は判例の理解として正確か」「この事実の拾い方で足りているか」は、指摘の前に判断が要る。基準が相対的で、事案ごとに動くからです。答案の添削も構造は同じで、形式の検査は入口にすぎず、勝負はその上の層で決まります。

自分の失敗に当てはめてみる

独学の限界について書いた記事で、私は自分の受験時代の失敗を3つ挙げました。この分類に当てはめると、こうなります。

失敗 AI添削で検出できるか
論証は書けているが当てはめが薄い 部分的に。規範と事実の対応が欠けていることは形式的に検出できる。ただし密度が足りているかの判定は別の層の話になる
時間配分を決めずに書き始め、後半が崩れる 検出しやすい。答案の分量配分と密度の偏りは可視化できる
対立説を理解しないまま自説に無理に当てはめる 検出しにくい。理解の欠落は、答案の表面には現れないことがある

3つのうち、少なくとも入口の部分はAIの側で拾える類型が大半です。独学の穴のかなりの部分は、AI添削で埋まる可能性がある。これは、当サイトが独学記事で出した「独学で埋まらないのは添削だけ」という結論を、更新すべきかもしれないという話でもあります。

ただし3つめのように、答案の表面が整っているのに理解が空洞になっている状態は、指摘されにくい。そして予備試験の論文で伸び悩む人が本当に詰まっているのは、しばしばこちらです。ここは慎重に見ておくべきだと考えます。

CBT移行が構造的に効いている

2026年(令和8年)の試験からCBT方式(パソコン受験)が導入されました。この変化は、スタディングの設計にとって追い風です。

この講座の演習環境は、答案をタイピングで入力し、画面上で法令を参照し、時間を計測しながら書くという形式です。演習環境と本番環境が一致していることになります。

手書き前提の時代であれば、これは弱点でした。実際、他社では現在も手書き答案の添削を受け付けていないケースがあり、それが従来はデメリットとされてきました。CBT移行によって、この評価は反転しています。

一方で、注意点も残ります。タイピング速度、画面上での見直しの作法、参照操作にかかる時間は、受験生自身が本番までに詰める必要があります。これは予備校の側で代替できる部分ではありません。

なお、AI添削の付属が公式サイト上で明示されているのは、2026年試験対応の「予備試験実践編」です。2027年以降の対応コースにおける仕様は、申込み前に公式サイトで確認してください。

アガルートとの違いは「何を買うか」

比較のために、当サイトでレビューしたアガルートと並べます。優劣の話ではなく、支払う金額で何を買っているかの違いです。

スタディング アガルート
論文対策込みの価格帯(税込) 約13〜15万円 約100〜130万円
添削の担い手 生成AI プロ講師
添削の即時性 即時 時間を要する
添削の通数・回数 AI添削チケット300枚(実践編) フル206通/ライト174通
学習の方向修正 自己管理が前提 担任講師の月1コーチング(フル)
合格特典 合格お祝い金制度 全額返金(フルのみ・実名公表等が条件)

構図はかなり明確です。スタディングは「回数と速度」を、アガルートは「人間の判断と伴走」を売っています。

そして、この2つは排他的ではありません。比較記事で書いたとおり、合格者の多くは複数の予備校を併用しています。軸となる講座を1つ決め、足りない機能を後から足すという考え方に立てば、スタディングは「軸」としても「補い」としても機能します。特に論文実践編は4万円弱の単体購入が可能なので、他校を軸にしている人が演習量を積み増す用途にも使えます。

向いている人・向いていない人

向いている人

  • 自己管理ができる人。スタディングの設計は、伴走ではなく道具の提供です。決めた分量を自分で消化できることが前提になります
  • とにかく書く回数を増やしたい人。即時に返ってくる添削は、回転数を上げるのに向いています
  • CBT環境での訓練を早く始めたい人。演習が本番と同形式です
  • 金銭的リスクを抑えて始めたい人。予備試験は例年の最終合格率が数%台の試験です。撤退時の損失を小さく設計できるのは、それ自体が合理的な判断です
  • 他校を軸にしていて、演習量だけ足したい人

向いていない人

  • 人に見てもらっている感覚がないと続かない人。ここは正直に自己申告したほうがいいところです。継続できなければ、価格の安さに意味はありません
  • 何を勉強すべきかの判断から他人に委ねたい初学者。学習計画の相談相手は付きません
  • 評価の較正を求めている人。「この答案で本番どのくらいか」を人間に判定してほしい段階では、別の手段が要ります
  • 紙とペンでないと頭が回らない人。本番がCBTである以上いずれ移行は必要ですが、移行コストは人によって小さくありません

迷ったときに取れる手段

スタディングは、判断を保留したまま試せる範囲が広い設計になっています。

  1. 無料会員登録で短答過去問演習を使ってみる。教材の作りとインターフェースの相性は、これで大まかに判断できます
  2. AI添削のデモを確認する。公式サイトにAI添削の挙動を紹介するデモ動画が公開されています。文章の説明より、実際の出力を見たほうが早いです
  3. 学生であれば学割の適用可否を確認する

まとめ

スタディングを「安いが添削がない講座」として処理するのは、2026年時点では現実に合っていません。添削の担い手をAIに置き換えることで、価格を10分の1に保ったまま演習の回転数を上げるという設計に変わっています。

判断の順序としては、こう考えるのが実務的です。まず、自分に自己管理能力があるか。ないならスタディング単体での完走は難しく、伴走型の講座を軸に据えるべきです。次に、自分がいま必要としているのは回数か、評価か。形式と論理を直す段階なら回数が効き、合格ラインとの距離を測る段階なら人間の目が要ります。

そして繰り返しますが、1社で全部を埋める必要はありません。13万円のスタディングを軸に、必要になった時点で人の添削を単発で足すという設計は、100万円を先払いするより理にかなっている場合があります。どちらが正解かは、あなたが今どの段階にいるかで変わります。

※本記事の料金・コース内容・キャンペーンは、2026年8月20日時点で公式サイトに掲載されている情報に基づきます。価格および仕様は予告なく変更される場合があるため、申込みの際は必ず公式サイトで最新の内容をご確認ください。また本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。